プロジェクト・ムー公演「ヤジルシ」は、
無事千秋楽を向える事ができました。
ご来場の皆様、ありがとうございました!


プロジェクト・ムー公演 太田省吾シリーズ第二弾
「ヤジルシ」
作◎太田省吾 演出◎川口典成
日時◎2025年5月29日(木)19:30、30日(金)15:00、19:30,31日(土)14:00,19:00,6月1日(日)15:00<時刻表>
会場◎PerformingGallery&Cafe 絵空箱(東京都新宿区山吹町361 誠志堂ビル1F
TEL 03-6265-0825)
入場料◎4,000円+1ドリンク700円(完全予約制)
*整理券の発行は開演45分前、開場は開演30分前です。
予約・問合せ◎TEL 080-3242-0773 E-mail munakata@fork.ocn.ne.jp
WEB https://www.projectmoo.net/
出演◎荒川昌代、板垣朝子、URARA、藤堂はな、藤田三三三、MARU OHREI、宗方駿、他
スタッフ
舞台監督◎原田拓巳、照明◎松竹理奈、ビデオ撮影・編集◎神之門隆弘、写真◎上野昌子、
照明協力◎髙良康成、音響協力◎主吏、協力◎渡部みか、ドナルカ・パッカーン、
制作◎くわはらよしこ、宣伝美術◎高野アズサ
「太田省吾は実は中心にいたのだ。」
私の生涯ベスト1の舞台作品は「水の駅」です。
赤坂の工房の客席で、何人もの眠っている観客と一緒に観たのだが、終演後しばらく茫然とし立ち上がれなかった。
そして、一緒に来ていた友人にこう呟いていた。
「これは演劇じゃない!・・・人間だ!」と。
それ以降も色々な作品を観て来たし、創っても来たが、この作品の事がいつも頭の片隅にこびり付いていたように思う。
そんな訳で、今年もプロジェクト・ムーは太田省吾シリーズ第二弾として「ヤジルシ」を上演します。
この作品は、駅シリーズ三部作(「水の駅」「地の駅」「風の駅」)の直後に上演された「やじるし」から始まり、「水の休日」「エレメント」「ヤジルシ-誘われて」と続いて行きました。
ポーランドの作家、W・ゴンブロヴィチの小説「コスモス」にヒントを得た、作中人物たちが部屋の天井に出現する謎めいた矢印に導かれるように行動する、というフィクションの設定が共通しています。
また、すでにだれかが(太田省吾自身も含めて)どこかで語り、あるいは書いた言葉を引用する、という手法を使っています。
そして「ヤジルシ」は「太田省吾 劇テクスト集(全)」に載っている最後のテキストでもあります。
つまり、太田省吾が生きていたら、この後どこに向かっていったのかを考えさせる作品でもあります。
60年代後半から始まったアングラ演劇が、寺山修司や唐十郎等によって脚光を浴びる中で、一歩遅れて、しかし全く違う流儀で自らの実験を繰り返し、「沈黙劇」というジャンルを切り拓いた太田省吾。
彼の言葉の選び方もまた独特で、「明確な意識だけが働く言葉」ではなく「盲目的な言語」を、「身体を無視する言葉」ではなく「身体とかかわる言葉」を、舞台に立つ人間の言葉としようと考えていた。
見得やアジテーションや説明の言葉ではなく、舞台に立つ人間が生命存在として発する言葉とはどのようなものか?
それは一見訳の分からない言葉かも知れないし、喋らない言葉(沈黙)なのかも知れない。
そして、その時の身体のありようとは一体どのようなものなのか?疑問符ばかりが浮かんでくる。「ヤジルシ」も、また謎のままだ。
しかし、一つだけ言える事がある。ヤジルシが示す最終地点は「死」だという事だ。その「死」に向かって、誰かと言葉を交わし合い、触れ合ったりしながら、向かっていく。
つまり「ヤジルシ」とは人生そのものなのかもしれない。でも、決して一人ではない事が救いだ。
「人間」とか「人生」とか、決して答えのない疑問。これこそが演劇が演劇たる意味だとすると、太田省吾は、実は演劇の王道を追求していたのかもしれない。
プロジェクト・ムー 代表 宗方駿